ビルディングタイプWG #02これからの学校建築

教育施設における新たな付加価値

教育施設の一次エネルギーの特徴は以下の3点です。

  1. 多用途に比べてエネルギー消費量自体が少ないこと
  2. 空調が全体の7割、次に照明が2割を占めているということ
  3. 換気によるエネルギー消費量が比較的大きいこと

元々少ない消費量を削減していくためには、多様な手法の積み重ねに加え、割合や数値の大きい照明・空調・換気の3つについて重点的に対策を行う必要があります。
そして、教育施設においても環境性能の実現とともにこの先の教育のあり方を考えた新しい付加価値を組み合わせた提案を行うことが重要と考えます。

拡大する学びの場と呼応した施設環境の作り方

学びの場で起きている変化と、省エネが両立する提案を目指して、これまで定説とされていた考え方を見直すことが必要です。

現在、アクティブラーニングの実践により、学び方自体が変わってきています。

GIGA スクール構想によりICT 端末が普及し、児童・生徒が一人一台の端末を使う学び方が日常的になりました。
従来の35 人~40人で行う一斉授業以外の多様な学習活動が行われつつあります。

教室と共用部の境界が曖昧になりICT 活用により学ぶ場所が教室・学校に縛られることもなくなってきました。

これまでの学習の場である教室は空調し、そうでない共用部は非空調という一般的な区分けについても、学校全体が学びの場になることを見据えた発想の転換が必要とされています。

拡大する学びの場の例

定説とされていた教育環境を変える次なる価値創造の種

これまで普通教室は南側向きに配置し、大きな窓を設けることが良しとされてきましたが、電子黒板やICT 端末を使う際には室内が明るすぎると画面が見えないので、教室のカーテンは常に閉めたまま、という使い方が目立つようになりました。

こういった新たな課題の解決と空調負荷削減を両立させるため教室を配置する方位・採光面積を既存の考え方から見直すという行為は教育空間に新たな価値を生み出す可能性を持っています。

採光面
安定的な採光が入る北側教室の再評価
採光面積
電子機器の見やすさにも配慮し、最適な面積を検証
照度設定
教室廻りのオープンスペースは予め照明の点滅分けを行い、活動に合わせた照度変更に対応
換気量
気積の大きさを利用し、自然換気は窓面から確保することを検討
安定採光の北側教室の例

学びの思想・場・環境を三位一体で捉える

今後の学校建築においては、どのような学びをしたいか、そのためにどんな学びの場が必要か、事業主との目線合わせがより大切になるでしょう。

多様な学びを実現には、活動に適した環境特性を創り出すことも重要です。

じっくり考えられる静かで落ち着いたところ、明るくて風が流れ、賑やかに集まれるところなど、いろんな場所がつくれるよう、学習活動と環境特性の掛け合わせを検討しています。

子どもや教職員が学びたい場所を自ら選択できることで、
「主体性を持って、何をどのように学ぶか」を、より深く考えることが出来るようになります。

対話を重ねながら施設づくりを深度化

目的や規模の異なる活動 × 人数規模=それぞれに適した学びの空間・設え

学校全体に散りばめた仕掛けにより、生徒は活動に応じて適した空間を選択し、活用することが可能になると考えます。
こども一人ひとりが自分の個性を伸ばし、先進的で柔軟な考えを育むための必要な活動を想定し、それぞれの活動に適した仕掛け・空間の設えを提案します。